精神的な不調による無断欠勤が疑われる従業員に、会社として、どのような対応をすべきでしょうか。この点、日本ヒューレットパッカード事件が先例となっています。この事案は、無断欠勤を理由に諭旨解雇処分を受けた者が懲戒処分の無効を主張して争い、会社側敗訴の最高裁判決が出ています。最高裁判決では、「精神的な不調のため無断欠勤を続ける従業員について、使用者は精神科医による健康診断を実施し、治療の推奨と休職処分の検討、その後の経過観察をとるべき」としています。また、「正当な理由の無い無断欠勤が継続した場合、不利益(懲戒規定に基づく処分等)に関する説明をすべきであった」としています。
精神疾患の人は、職場を失うのを恐れて、自分で病気であることを認めたがらない傾向が強いと言われており、また本人には自覚がない場合もあったりと、本人からの申告はないけれども、精神上の不調が疑われるケースは、今後も増えていくと思います。
正当な理由のない無断欠勤が継続する場合、懲戒処分の対象としている会社は多いと思います。しかし、従業員の無断欠勤が、精神的な不調のためとみられるような場合には、会社所定の欠勤届出を期待できない状況であり、メール等の方法で何らかの伝達があれば、正当な理由のない「無断」欠勤とは認められない可能性が十分あります。ですので、このような場合に、無断欠勤を理由に、いきなり懲戒解雇というような処分を行うことは、問題があるでしょう。
精神疾患の疑いのある従業員については、たとえ本人の申告や診断書の提出がなかったとしても、まずは専門医への受診を勧め、その結果によっては、雇用維持に配慮して、休職扱いを検討する必要もあるでしょう。