【1】通勤手当は「賃金」に該当するか?
労働基準法で、「賃金とは、賃金、
給料、手当、賞与その他名称の如何を
問わず、労働の対償として使用者が
労働者に支払うすべてのものをいう」
とされています。
通勤手当も、就業規則や雇用契約書等に
その支給額や支給基準が定められていれば、
労働基準法上の賃金になるとされています。
【2】賃金支払い5原則
通勤手当が「賃金」に該当するとなると、
賃金支払5原則に従う必要があります。
賃金支払5原則とは、
①通貨で、②直接本人に、③全額を、
④毎月1回以上、⑤一定期日に支払う
というものです。
通勤定期券での支給(現物支給)は、
この①通貨払いの原則に反することに
ならないかが問題になります。
通貨払いの原則には、次の例外があります。
1)法令に別段の定めがある場合
2)労働協約に別段の定めがある場合
3)厚生労働省令で定める賃金について
確実な支払いの方法で省令で定めるもの
による場合
このうち、1)の法令は現在は無く、
3)については、従業員の同意を得て
口座振込を行う場合等が定められています。
ですので、通勤定期券の現物支給は、
2)労働協約に別段の定めがある場合
の例外に該当すれば、
認められることになります。
【3】労働組合が無い場合は、必然的に
労働基準法違反になる
労働協約とは、労働組合と使用者との間の
団体交渉において合意した労働条件その他に
関して、書面にし双方署名又は記名押印
したものです。
この労働協約が締結されていれば、
通勤定期券での現物支給は労基法違反
とはなりません。
しかし、そもそも労働組合がない場合には、
労働協約の締結ということができないので、
通勤定期券の現物支給はできない
ということになります。
また、労働協約が締結されていたとしても、
現物給付が認められるのは、
当該労働組合の組合員のみです。